逗子海岸の夕焼けから生まれた曲
こんにちは、星野しおりです。
秋の夜が少しずつ長くなってきましたね。
今日は「ガラスの手紙」という曲について、わたしの言葉でゆっくりお話ししてみようと思います。
うまく話せるか自信はないのですが、聴いてくださる皆さんに、この曲のことを少しでも近くに感じてもらえたらうれしいです。
残暑が残る9月の夕方、砂浜を歩いて
この曲は、逗子海岸を散歩していたときに、夕焼けを眺めながら考えた曲です。
9月とはいっても、まだ残暑が残っている季節でした。
日が傾いても空気にはぬるさが残っていて、歩いていると、風がときどき頬をなでていきます。
波の音と、砂を踏む足音。
その向こうで、空がゆっくりと色を変えていく。
そんな夕方でした。
歌詞の最初に「夕暮れの太陽が 頭の上で揺れてる」という一節があります。
あの揺れている感じは、砂浜で見上げた夕焼けの、まぶしくて、少しだけ心もとない感覚をそのまま言葉にしたものです。
果てしない海と、ちっぽけなわたし

目の前には、果てしなく広がる海がありました。
大きな海と、大きな空。
そのなかに立っていると、自分がとても小さな存在に思えてきます。
歌詞にも「果てしない海と 砂浜のちっぽけな私」と書きました。
ちっぽけだな、と思うことは、さびしいようでいて、不思議と心が静かになる時間でもありました。
そして、そういう静かな場所にいると、どんな思い出にも「君」の記憶が焼き付いていることに気づいてしまうのです。
頭の中をぐるぐると回って、離れてくれない。
夕焼けの色に、思い出が重なっていくような気がしました。
壊れそうで透明な、ガラスのような気持ち
ちょっとしたことで壊れてしまいそうな、透明なガラスのような気持ち。
この曲のいちばん真ん中にあるのは、そんな気持ちです。
そういう儚い恋愛観、皆さんにもありませんか?
強く握ったら割れてしまいそうで、でもそっと持っていても、いつ欠けてしまうか分からない。
大切だからこそ、扱い方が分からなくなる。
わたしにとってガラスは、そんな繊細さを表すのにぴったりの言葉でした。
「ガラスの手紙じゃ伝わらない」に込めたもの

サビに出てくる「ガラスの手紙じゃ伝わらない」というフレーズは、この曲のタイトルにもなっています。
透明なガラスの手紙は、向こう側が透けて見えるのに、文字がうまく読めません。
光を受けてきらきら輝くばかりで、いちばん伝えたい言葉が、ほんとうは届かない。
そんなもどかしさを、手紙という形にたとえてみました。
「ガラスの手紙」は、そんなわたしの気持ちを伝えきれない、という心境を書いた曲なんです。
遠く離れたわけじゃないのに、言葉にできない
歌詞には「逢えないほどふたりは 離れたわけじゃないのに」という言葉が、何度も出てきます。
それほど遠くに離れたわけではない、あの頃。
すぐそばにいるのに、というより、手を伸ばせば届きそうな距離にいるのに、言葉だけがどうしても出てこない。
君が笑うたび、君が話すたび、そのすべてが切なくて、それなのに、言葉にできない想いだけが胸の中にたまっていく。
遠くにいるから切ないのではなくて、近くにいるのに言えないから切ない。
その感じを、この曲では大切に描きたいと思いました。
「君」は、わたしにとって歌の中の存在です。
だから、どんな人なのかを説明することはしません。
情景と気持ちだけを、そっと置いておきたかったのです。
歌詞をたどって:琥珀色に染まる言葉
ここで、歌詞を全文載せておきますね。
あとに続く部分で、いくつかのフレーズについてお話ししますので、よかったら見返しながら読んでみてください。
歌詞全文
夕暮れの太陽が
頭の上で揺れてる
果てしない海と
砂浜のちっぽけな私
どんな思い出にも、
君の記憶が焼き付いてて
頭の中をぐるぐる回っているよガラスの気持ちが
降り注ぐ光を跳ね返して
本当に伝えたい言葉を
琥珀色に染める逢えないほどふたりは
離れたわけじゃないのに
君が笑うたび、君が話すたび
その全部が切なくて
言葉にできない想い
ガラスの手紙じゃ伝わらない駅前のカフェ
土曜日の午後のざわめき
短めに切った髪
君は気付くかな?
何気ない日常が
愛おしいって思う
君との時間が特別だって
分かってくれるよね伝えようとするたびに
ガラスの心が震えて
本当に伝えたい言葉を
琥珀色に染める逢えないほどふたりは
離れたわけじゃないのに
声をかけたら、君はたちまち
壊れてしまう気がして
寂しさに涙が滲んで
ダメになってゆく私がいるふと、流れ落ちた涙が
君を不安にさせて、
寂しい思いをさせてた
こんなのずるいよね?
優しい吐息に誘う唇
ガラスの想いが溶けてゆく逢えないほどふたりは
離れたわけじゃないのに
気の利いたこと、言えないけど
微笑むだけでいいなら
ずっと隣にいたいの
ガラスの想いを抱えたまま逢えないほどふたりは
離れたわけじゃないのに
君が笑うたび、君が話すたび
その全部が切なくて
言葉にできない想い
ガラスの手紙じゃ伝わらない風にのせて 君のもとへ
届くといいな
ラララ…
夕暮れ、ガラス、琥珀色――光と色の景色

この曲には、光と色の言葉がたくさん出てきます。
夕暮れの太陽、降り注ぐ光、そして琥珀色。
「ガラスの気持ちが降り注ぐ光を跳ね返して、本当に伝えたい言葉を琥珀色に染める」。
ここは、逗子の夕焼けを見ていたときの景色が、いちばん近いところです。
透明なガラスに夕日の光が差し込むと、透明だったはずのものが、やわらかな琥珀色に染まっていきます。
伝えたい言葉も、きっと同じなのだと思います。
そのままではまっすぐ届かなくて、気持ちというガラスを通すうちに、光を受けて、あたたかな色に変わってしまう。
はっきりした言葉にならないぶん、色になって、にじんでいく。
そんな言葉の姿を、琥珀色という色にたくしました。
「微笑むだけでいいなら」という願い
歌詞の終わりのほうに、「気の利いたこと、言えないけど 微笑むだけでいいなら ずっと隣にいたいの」という一節があります。
うまく言葉にできないなら、せめて微笑むだけでもいい。
それで十分なら、ずっとそばにいたい。
ガラスのように壊れそうな想いを、無理に隠したり、きれいに磨き直したりしないで、抱えたまま隣にいられたら。
そんな小さな願いを込めました。
言葉にできないことは、弱さのように感じてしまうこともあります。
でも、言葉にならないほどの想いがあること自体が、その人にとってどれだけ大切かを表しているのかもしれない。
歌いながら、わたし自身もそう思えてきました。
最後は「風にのせて 君のもとへ 届くといいな」と、ラララ…で終わります。
ガラスの手紙では伝わらなくても、風にのせたら、どこかに届くかもしれない。
そんなささやかな祈りです。
秋の夜長に、そっと聴いてほしい
映画のエンディングのような、広大で切ないラブソング
「ガラスの手紙」は、まるで映画のエンディングで流れるような、広大で切ないラブソングになったらいいな、と思って書いた曲です。
物語が終わって、画面が静かに暗くなっていく。
そのあとも、胸の中に余韻だけが残っている。
そんな時間に寄り添える曲でありたいと思いました。
夕焼けの海の広さと、ひとりの気持ちの小ささ。
その両方を、歌の中に一緒に入れてみたかったのです。
皆さんにも、ガラスのような気持ちはありませんか
最後に、もう一度だけ。
皆さんにも、ガラスのような気持ちはありませんか。
ちょっとしたことで揺れてしまう、透明で壊れやすい気持ち。
大切な人のことを思うほど、言葉が出なくなる夜。
もしそんな夜があったなら、この曲がそばにいられたらうれしいです。
ぜひ、秋の夜長に聴いてほしいな。
部屋の灯りを少しだけ落として、窓の外の静けさを感じながら、ゆっくり聴いてもらえたら、わたしはとても幸せです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
