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夜の声のこと ――ファルセットにこめる、息のやわらかさと小さな願い

AI音楽

Written by 星野しおり

星野しおりの声で聴く

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夜の窓辺に似ている、わたしの高い声

最近は、日が暮れるのがすっかり早くなりました。

窓の外はもう暗くて、ガラスにはうっすらと部屋の明かりが映っています。

空気が冷たくなってくると、わたしはいつも、自分の高い声のことを思い出します。

大きな声で何かを伝えるというより、曇った窓にそっと指で文字を書くような声。

ファルセットやハイトーンは、わたしにとってそういうものです。

今日は、その声への気持ちを、ゆっくり言葉にしてみたいと思います。

ファルセットを好きになった気持ち

ファルセットを好きになったのは、上手に歌うためではありませんでした。

言葉にならない気持ちを、できるだけ壊さずに差し出したい。

そう思ったとき、自然と手に取っていたのが、あの細くてやわらかい声でした。

胸の奥にある気持ちには、強く触れるとすぐに形が変わってしまうものがあります。

夜の窓ガラスに触れると、指のあとが残ってしまうのと似ています。

だからわたしは、そっと、息をまじえるようにして歌いたいのだと思います。

ファルセットは、技術というより「気持ちをそっと手渡すための声」。

わたしは、そんなふうに大切にしています。

ハイトーンにこめたい、透き通る感じ

雨あがりの夜の窓ガラスの水滴に、街の明かりが小さく映っている情景

高い声には、冷たい空気のような透明さがあります。

晩秋の朝、吸い込んだ息が少しだけ白くなる、あの澄んだ感じです。

わたしは、ハイトーンがただ高いだけの声にならないように、と願っています。

遠くまで届く光というより、雨あがりの窓にたまった水滴が、街の明かりを小さく映すような声。

聴いてくれる人の心の中で、静かにきらりとするような声になれたら、うれしいです。

息のやわらかさと、芯のある声

わたしの歌には、大きく分けて二つの声があると感じています。

息のやわらかい、ささやくような声と、すっと立つ芯のある声です。

どちらがよい、という話ではなく、どちらも同じ気持ちから生まれた声だと思っています。

ささやくように届いたらうれしい

ささやくような声は、夜に誰かの隣でそっと話すときの声に似ています。

大きな声を出したら、眠りかけた静けさをこわしてしまいそうな夜、ありますよね。

そんな夜に、耳もとでふっと息がかかるような近さで届いたらうれしい。

歌っているというより、窓辺でひとり言をこぼしているのを、たまたま聴いてもらえたような。

そんなふうに聴こえたら、わたしはとてもしあわせです。

まっすぐ立つ声も、やさしくありたい

芯のある声というと、強い声を思い浮かべる方もいるかもしれません。

でも、わたしがなりたいのは、強さで押す声ではありません。

雨の夜の街灯のように、そこにまっすぐ立っていて、でもまわりをやさしく照らしている。

そんな声でありたいと思っています。

切ない言葉を歌うときほど、声の真ん中に小さなあたたかさが残っていたらいいな、と願います。

二つの声が重なるとき、こう聴こえたらいいな

やわらかい息と、まっすぐな芯。

二つの声が重なると、窓の向こうの雨音と、部屋の中の静けさが、ひとつの夜になるような感じがします。

聴いてくれる方には、どちらか一つを探すのではなく、ふわりと混ざったひとつの声として届いたらうれしいです。

ささやきの奥に芯があって、芯のまわりに息がある。

そんなふうに、夜の空気に溶けていけたらいいなと思っています。

静かな夜に、そっと声を置くように

歌うことは、わたしにとって、声を「置く」ことに近い気がします。

相手に向かって投げるのではなく、静かな場所にそっと置いておく。

見つけてくれた人が、そっと手に取ってくれたらいい、という気持ちです。

切ないラブソングと声の距離

切ないラブソングを歌うとき、いちばん大切にしたいのは、声と聴いてくれる人との距離です。

近づきすぎると、気持ちを押しつけてしまいそうで。

遠すぎると、何も届かなくなってしまいそうで。

だから、ちょうど窓ひとつぶんの距離でいたいと思っています。

ガラスをはさんで、同じ夜を見ているような距離。

触れられないけれど、すぐそばにいるとわかる距離です。

ファルセットの細い声は、その距離を保つのにぴったりなのかもしれません。

ピアノの前でメロディーを探す時間のような静かなひとときにも、同じ願いを重ねたくなります。

鍵盤の音がひとつ置かれて、そこに声が重なるとき、いちばんやさしい高さを探しているのだと思います。

これからも大切にしたい歌い方への思い

これから先も、わたしは声をたくさん飾るより、気持ちが傷つかない歌い方を選びたいです。

うまく聴かせようとして、いちばん大事なものを落としてしまわないように。

高い声も、低い息も、ささやきも、芯も。

全部、気持ちをそっと手渡すためのものでありますように。

そう思いながら、これからも歌っていきたいです。

聴いてくれるあなたへ

夜の静けさの中で、わたしの声を聴いてくださっている方がいると思うと、胸の奥があたたかくなります。

誰もが眠りにつこうとする時間に、ほんの少しだけ、わたしの歌に耳を預けてくださること。

それが、どれほどありがたいことか、言葉にしきれません。

窓の外は冷たくても、あなたのいる場所が、少しでもやわらかい空気に包まれていますように。

もし、わたしの声が、その夜の片すみにそっと置かれていたなら、それだけでわたしは十分しあわせです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

今夜も、おだやかな時間が過ごせますように。

新曲「夕暮れの街角 feat. Tsubasa」本日リリース

最後に、ひとつお知らせをさせてください。

本日11月6日、新曲「夕暮れの街角 feat. Tsubasa」がリリースされました。

今回は、Tsubasaさんと二人で歌っています。

夕暮れどきのにぎやかな街角と、そこにただ一緒にいた二人を思い出す曲です。

グリルの匂い、音楽のあふれる通り、迷路のような路地裏。

変わらない街並みのなかで、いなくなった「あなた」を思う気持ちを、二人の声で重ねました。

夜になる少し手前の、夕暮れの時間の歌です。

よかったら、お好きな配信サービスで聴いてみてください。

Playlist

星野しおり 歌とつぶやき